top of page

園長お便り

​こちらは、園だよりで掲載されている巻頭言です。

2021年7月号

         『折りたたみ傘の準備』

 

 やりたいことがあるとします。自分自身で計画を立て、準備をしてやり始めます。その活動がうまくいったら、喜びや達成感、満足感が生まれます。自分で決めたことを自分がしたいときにするのですから、見通しも良く、自分のこととして行えますし、もし失敗しても、自分で反省して次につなげることができるでしょう。

 

 しかし日常の生活では、いつも自分の思い通りに事が運ぶはなく、何か邪魔が入るものです。私たち大人、特にお母さん自身のやりたいことを妨げるもの、邪魔するものとは何でしょう。その一つは、愛する我が子。お母さんが自分でやりたいことをしているときに、お漏らしたり、「着ない!」と主張して譲らなかったり、兄弟げんかを始めたりと、さまざまなことが起こります。

 

 お母さんの自分の活動は、このような要因でストップ。子どもに対して、そこで起こった物事に対して、何らかの対応をしなければなりません。自分がしたいことを予告なく突然、中断させられたわけですから、むかついたり、いらだったりします。自分はこの子の親であり、子育ては自分の大切な課題だと頭でわかっていますし、子どものことを心から愛しており、子どもが起こすいろいろは、成長発達の中で必要な当たり前なことだと知っているのに、です。

 

 子育てをたいへんと感じる原因の一つは、予定していないことが、頻繁に突然起こり、それにより自分のしていることが妨げられること。子どもが癇癪を起こしたり、お漏らししたり、喧嘩をしたり、コップをひっくり返したり、といったことは、お母さんがその時に何をしているかとは関係無しに突然起こります。そしてそれに振り回されてしまいます。すると「なんで今それをするの?」と、それを子どもにぶつけてしまうこともあるでしょう。しかし乳幼児期の子どもは、お母さんを困らすために「わざと」しているのではなく、無意識にそれをしているのです。

 

 子どもの予期せぬ行動を「自然現象」、「天災」として受け止めてはどうでしょう。突然、雨が降ってきたのに傘を持っていないとき、雨や雲や神様に怒る人はいません。「しかたない」と自然に受け入れることが出来ます。「梅雨」には雨が多く降ることを私たちは知っているので、折りたたみ傘を常に携帯していれば、急な雨で濡れることはありません。

 

 乳幼児期は、人生の初期にある「雨期」のようなもの。いつ雨が降っても大丈夫な準備をしておきましょう。準備とは、汚した服をすぐに着替えられるように、着替えをすぐに取り出せるようにしておくこと、何かをこぼした時にすぐに床を拭ける雑巾を食卓の近くに準備していくこと、何かをやめさせたいときの言葉かけを考えておくこと、といった具体的なことでもあり、この時期には雨は降るものと、それを受け入れられる健康な精神・心・身体の状態を維持することなど、いろいろとあるかと思います。

 

 そして、折りたたみが傘を持っていることへの自覚。つまり、自分は子どもが突然やらかすいろいろなことにすぐに対応できる準備をしていることを自覚していること。それがあると、子どもとの生活が、調和の取れた穏やかなものになるのではないかと思います。

​過去のお便り

bottom of page