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園長お便り

​こちらは、園だよりで掲載されている巻頭言です。

2022年10月号

『栄養摂取の方法

 

 

 ありとあらゆるサプリメントが流通しています。私たちはいろいろなコンプレックスを抱えて生きており、気になっていることが改善されるとの宣伝が何故かスマホに押し寄せてきます。そしてそれを購入しても広告のような成果は無かったという経験をお持ちの方は多いかと思います。

最近では、子ども向けのサプリメントも流通し始めています。私が南沢シュタイナー子ども園のクラス担任をしていた頃、そこでシュタイナー教育を学び、仙台でシュタイナー教育を長年実践している虹乃美稀子さんの文章を抜粋して紹介します。

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  私のSNSサイトには「子ども用サプリメント」や「子ども用栄養補助食品」の広告が急増し、なんとも言えないやるせなさを感じています。「その悩み、鉄分不足かも。イライラや集中力不足は隠れ貧血が原因?」、「子育ての悩みをこの〇〇サプリで解決!」、「今飲まないと伸びない身長、飲ませてあげる親の優しさ」宣伝文句はこんな感じです。

 今の医療では、熱が上がったら薬で下げるといった対症療法に重きがおかれ、原因を考え、自分の力で症状に向かい合って体の声に耳を澄ます、という姿勢が失われてきて、子育てにも同じような考えが浸透してきています。そうした流れにつけ込んで、一儲けしようと子育て市場をねらう企業の思惑も大きいのでしょう。目の前にいる子どものありのままの姿から目をそらし、安易にサプリメントという「薬」に頼らせ依存させようとする広告には、保育者として危険を感じています。

 

 現代の栄養学では栄養素の摂取が大切とされていますが、もう一つ大事なのは、私たち人間は自分の「命」を維持するために植物や動物から「命をいただいている」ということ。「命」に宿るのは生命力で、いのちをいのちとして維持し続ける力です。しなびかけた野菜や、冷凍保存していた野菜と、畑で採ったばかりの野菜とでは、その味や風味だけでなく、栄養にも違いがあるのです。

生命力のあるものを食べて消化するには、自分自身の生命力が必要です。病気で弱っていると消化力も弱まっているので、おかゆやスープが美味しく感じられ、ジャンクフードや冷凍食品が食べやすいのは、生命力が失われていて消化の力を必要とせず、人間が楽できるからです。

 消化とは、自分ではない自分以外の「異物」を取り入れて、自分ではない「命」を自分の一部にしていくこと。食べ物を自分の力で噛み砕き、胃で消化し、それを酵素と混ぜて小腸で吸収していきます。自分以外のものを自分自身に取り入れていき、その食べ物に含まれていた生命力も自分のものにしていきます。自分の体に必要な栄養素を「食べる・消化する」ことを通して、食べ物の中から自分で取り出していくのです。そして消化器官も、その消化行為を繰り返すことで十分に働くようになります。楽をすると、生命力は活性化できないのです。

 サプリメントという機械的に精製された単一の栄養を直接口に放り込んでしまえば、消化器官は「自分で栄養を取り出す」ことをしなくなります。生命力の弱った子どもは、また様々な症候群で大人にSOSを発してくるでしょう。私たちは、そうした子どもたちに、なおサプリや薬を投与していくことで解決しようとするのでしょうか。何が子どもたちを真の意味で守るのか、現代に生きる大人は子どもたちが企業利益に搾取されないようによく目を光らせていなくてはなりません。

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この文章からも、何故しおん保育園で「食」を大切にしているかを感じていただけると思います。しおん保育園の食事を通して、子どもたちは「命」をいただき、そこから必要な栄養を自分で取り出して摂取し、自分の生命力を養い、健やかに育っています。

引用した原文を読みたい方はこちら

https://sendaiyunta.com/smallvoice103/ 

​過去のお便り

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