吉良 創園長おたより
滝山しおん保育で毎月発行している園だよりに掲載された記事です。
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2025年8月号
『平和、平安、静けさ、あたたかさ』
大宇宙(マクロコスモス)と小宇宙(ミクロコスモス)という言葉を耳にしたことはありますか? 大きな宇宙がマクロコスモス、一人の人間がミクロコスモス。一人ひとりの小さな人間の中には、大宇宙の本質が内在していて、反対に、大宇宙も一人の人間のような在り方をしていて、それは照応しているという観点です。自分のことを知りたければ宇宙全体を見よ、宇宙のことを知りたければ自分自身を見よ、などと古くから言われますが、現代社会の中でも、いろいろなことに気づかせてくれるヒントがあるように思います。
私がドイツに留学していた時、仏教、イスラム教、神道などの宗教について精通しているキリスト教の司祭の講演を聞くチャンスがありました。ちょうど湾岸戦争が始まった頃で、イラクへのミサイル攻撃の模様が報道されている時期に行われた講演でした。
講演はマクロコスモスとミクロコスモスの照応についてのテーマだったのですが、大宇宙と小宇宙の間に、中宇宙(メゾコスモス)としての「地球」があるという観点が提示されました。地球上で起こっている戦争、民族や国の間の争い、環境問題、政治や経済の問題、飢餓や貧困の差なども、地球上の自然界での異常気象、地震、台風、猛暑や寒波、火山の活動なども、大宇宙と一人の人間の在り方と照応しているという見方です。
一人ひとりが自分の内面(小宇宙)に、平和、平安、静けさ、あたたかさ、を作り出し、自分を良い状態にして、それを保っていくことが、湾岸戦争が起こった状況の中で大切だと彼は語りました。ミクロコスモスとしての一人ひとりの中に、平和、平安、静けさ、あたたかさ、といったものが作り出されるのなら、それはマクロコスモスとしての宇宙全体だけでなく、メゾコスモスとしての地球にも平和、平安、静けさ、あたたかさを作り出せる可能性があるのではないか、という提案でした。
最近の地球(メゾコスモス)を見てみると、戦争や民族同士の争い、原子力発電所は無くならず、政治や経済もどうなっているのかという状況で、そして猛暑、豪雨、台風、地震などの被害も続いています。気休めと言われてしまうかもしれませんが、ミクロコスモスとしての私たち一人の中の、平和、平安、静けさ、あたたかさを生み出し、維持していくことを、乳幼児期の子どもたちの傍にいる私たち大人一人ひとりが心がけていけたら、きっとメゾコスモスとしての地球に平和、平安、静けさ、暖かさを生み出せるのでないかと思います。そしてそのような大人の傍で子どもたち健やかに育っていけるのではないでしょうか。