吉良 創園長おたより
滝山しおん保育で毎月発行している園だよりに掲載された記事です。
過去の記事
2025年3月号
『終わりは始まり』
三月は卒園児を送り出す月。今年度最後の幼児の保護者会と親父の会では、日頃の保育の場面の写真を見ていただいた最後には、卒園する年長児それぞれの入園した頃の写真と今の写真を一緒に見ていただきました。その際、その子どもの保護者の皆さまには一言お話をお願いいしました。小さい時からのその子らしさが残りつつも大きくしっかり育った年長児の今の姿は本当に素晴らしいです。
保育園で過ごしている時のその子は、親と家から離れ、小さいながらに社会に出てそこで生きていきます。そこでのたくさんの体験、活動を通して、その子どもならではの個性、性格、意識が育っていきます。身体は大きくなり、身体能力も、言語能力も、思考能力も、社会性も育っていきますが、それらを貫いている自分意識、自我も育っていきます。
南畑や畑をはじめとするたくさんの自然とのふれあい、大家族のような縦割りの保育の中でのたくさんの子どもたちや大人たちとの出会い、造形、健康体操、オイリュトミー、陶芸、音楽、手仕事、料理などなどの活動。これらの体験は、子どもたちが人間として生きていく基盤を作っていくことに役立ち、それによりその子らしさが育ってきたのだと思います。
卒園して小学校に通い始めても、この自分意識の発達発展は続いていきますが、この領域はその子どもだけの内的な世界で、そこには親も保育士や教師も介入できない聖域。その子どもの自分意識、自我に必要以上におせっかいな介入はせず、それが育っていくことに寄り添っていきたいものです。ありのままの自分が周りにいる人間に受け入れられていると感じられる時、子どもも大人も自ら成長していけるのだと思います。自分が受け入れられていることが、自己教育の場となるのです。
卒園する子どもたちにとって、滝山しおん保育園が、ありのままの自分が受け入れられていると幼児ながらに感じてくれた場であったかどうか。その結果がわかるのは、その子どもが大人になったときかもしれません。でも、今の年長さんの生き生きとして表情や姿を見ると、そのような場を作ることは、ある程度できたのではないかと思います。それは保護者の皆さまのご協力があったからであり、子どもたちの育ちに寄り添うという共同作業ができたのではないかと思っています。至らないことも多々あったと思いますが心より感謝しています。ありがとうございました。
そして、子どもたちの成長発達に寄り添うことを自ら選び、本当に一生懸命保育園のために仕事をしてくれている職員。この滝山しおん保育園のチームの一人一人がいてこその子どもの成長であることも忘れてはいけません。心より感謝しています。
卒園しない子どもたちは、三月末に進級式があり、四月から新しいクラスの担任や新入園の子どもたちとの生活が始まります。いろいろな別れ、さよなら、そして、いろいろな出会い、始まり、そして変化が交錯します。
でも、子どもは成長し続け、私たち大人の人生も続いていきます。終わりは始まり。子どもたちの更なる成長に寄り添う私たち大人も、精神的に発展進化し続けていく人でありたいものです。