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創園長おたより

 滝山しおん保育で毎月発行している園だよりに掲載された記事です。

024年3月号

『子どもが幸せになる方法

 子どもの年齢が低いほど、言葉は伝わりにくいものです。言葉は抽象的。言葉で伝えるよりも、目の前で行う方が子どもには伝わります。目の前で誰が行っているのを見ると、乳幼児は同じことをし始めます。子どもは生まれた時から無意識に模倣する能力を持っているのです。

 赤ちゃんが日本人の家庭で育つと日本語を話し始めます。しかし日本人の赤ちゃんでも、何らかの理由で一歳までの時期をドイツ人の家庭で過ごしたとしたら、その赤ちゃんはその家庭で話されているドイツ語を話すようになるでしょう。実際にその場所で耳にする言葉を話せるように身体が形成されていき、一歳になって歩き始めて言葉が出始めると、一歳までに周りで話されていた言葉を話し始めるのです。

 実際に話す言葉も模倣されるわけですが、その言葉が話せる身体の形成にも模倣衝動が影響します。周りにいる人間の行為を見て、それをお手本として真似して行為するだけではなく、その行為を無意識に行える身体も作っているのが乳幼児期の子どもです。

 人間の愚かな行為を見ると、それがお手本となり、その行為を真似して行い、その行為を当たり前に行える脳も含めた身体を作ることになってしまいます。逆に周りの人間が優しく振る舞っていて、優しく接してもらった子どもは、その真似をして人に対して優しく接することを始めますし、自然に人に対して優しく接することのできる身体を作っていくことになります。

 子どもに、人に対して優しい人になってほしくて、どうしたら子どもが優しくなるか、その方法をあれこれ考えて、優しいとは何か、優しくしないとどうなるか、優しくされなかったら相手はどう感じるかといったことを、言葉で伝えても、それによってその子どもが優しくなれるかは、何とも言えません。

 子どもに優しくなってほしいのであれば、どうしたらいいでしょうか。子どもが優しくなる方法を考えたり、言葉による説明をしたりするのではない、よい方法があります。それは、子どもの傍らにいる私たち大人一人ひとりが、人に対して優しい人であるということ。そのことがお手本となり、子どもはそれを模倣して、人に対して優しく接し始めます。そして人に対して優しく行為できる身体を育んでいくのです。

 子どもに幸せになって欲しかったら、私たち自身が幸せであればよいのです(言うのは簡単ですが)。幸せに生活し、仕事してる大人(親も保育士も他の人でも)と出会うことができたら、子どもは幸せな人間に育っていくことでしょう。

 そのような幸せな人のたくさんいる保育園に少しでも近づけるよう滝山しおん保育園では保育をしていますが、子育てや保育は人間対人間の営みなので、いつもうまくいくわけではありません。でもその中で育ち、卒園していく子どもたちが、優しく、幸せな人間に育ってくれたかな、これからもっとそう育っていったらいいな、などと思いめぐらしている三月です。

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