吉良 創園長おたより
滝山しおん保育で毎月発行している園だよりに掲載された記事です。
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2026年3月号
『育つ人に育ててもらう』
卒園式を迎える年長児たちの成長をはっきりと意識できて、それを嬉しいと感じることができる3月は、保育園に勤めている保育士や職員にとって、特別な時期です。3月は毎年やってくるので、いつものことということもできますが、毎年、その年の年長児の顔ぶれによって、感じることは異なります。
今年の年長さんたち、それぞれによく育ったなと思います。そこには二つの育ちがあります。一つ目はどの子ども人間の乳幼児期に育つべきものが育っていきました。身体がしっかりと形成され、それに伴った運動能力を身につけ、そして身体の中では目に見えない生命力、感情や心、そして自分意識も育っていきました。この育ちは、「人間になっていく道」と呼べるプロセスです。人間になっていくプロセスは、他の人と共通の部分がたくさんあります。この時代の人間、その民族の人間、その親族家族の人間になっていくこの道は、過去からの人類の叡智や歴史との関係が強く影響しています。年長さんたち、しおん保育園の子どもになってきた、ともいうことができると思います。
もう一つは自分らしさの育ちです。20人の年長さん、一人ひとり特別なその子ならではの個性がはっきりと育ち、光を放っています。これは「自分になっていく道」。自分になっていく育ちの道は、一人ひとり、全く違うプロセスを辿っていきます。生まれた時に太郎という名前をいただいた赤ちゃんが、いかによりよい太郎くんになっていけるかというプロセスです。今の社会や教育では「人間になっていく道」ばかりが優先されてしまい、「自分になっていく道」をちゃんと辿れないケースも残念ながらよく見られます。
しおん保育園で年長さんたちは、たくさん自然とふれあい、その中でたくさん遊び、身体を動かし、健康な食事をいただき、個性的な子どもたちや大人たちと過ごし、たくさんの芸術体験もしてきました。これらの体験は「自分になっていく道」を歩んでいくことを促してくれたと思います。
年長さんたち、どの子もそれぞれの家族の皆から愛されて育ってきたことを感じることができることも嬉しいことです。子育ては大変なこともいろいろありますが、乳幼児期の子どもと共に居られることは特別な時期だったと思います。よい思い出がたくさんあることと思いますし、育っていく子どもによって私たち大人が育ててもらったとも、いろいろあるのではないでしょうか。
子どもたちの育ちに寄り添うことができる保育園で働いている私たちは、育っていく子どもたちに育ててもらっていることを強く感じるのも、毎年の3月。でも家庭と保育園の違うところがあります。家庭では子どもたちの年齢はずっと上がっていきますが、保育園は0歳児から5歳児が集う場です。年長さんが巣立っていくこということは、小さい新しい子どもたちがやってくるということ。喜びを持って子どもたちを送り出し、そして受け入れていきたいと思います。年長さんたちのこれからの健やかな育ちを心よりお祈りしています。