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園長お便り

​こちらは、園だよりで掲載されている巻頭言です。

2022年2月号

      いやいや期と自分意識の目覚め

 

 

 二歳を過ぎると、子どもは「いや!」「だめ!」「しない!」と言い始めます。いわゆる「いやいや期」「反抗期」です。この時期に「いや!」「だめ!」と言うのは当たり前。でも、お母さんを困らせようと思って「いや!」と言っているのではありません。まだその言動には裏表はなく、故意に嘘をつく能力はまだ育っていません。また、反抗期は一時的なもので、永遠に続くわけではありません。

 

 赤ちゃんは明るい覚醒した意識を持っていません。まだ暗いけれど広がりをもった意識の中で暮らしていて、口に入れたり、触ったり、握ったりしながら、いろいろなものごとと少しずつ出会い気づいていきます。それに伴い、まだ暗い意識の中に少しずつ明るい部分が生まれ、広がっていき、二歳半くらいになると、その覚醒した明るい意識の部分を「自分」と感じ始めます。最初の「自分意識」の目覚めです。だいぶ体は育ってきていて、自分が体を通して外の世界と分離した存在であることに気がつくのです。

 

 この時期から、自分のことを「わたし」「ぼく」と呼び始めます。それ以前は、呼ばれた名前が主語になります。「ターくんはね。」という感じです。また、この時期から思い出せる記憶が始まります。それ以前のことは思い出すことはできません。ここから自分の歴史が始まると言ってもよく、その積み重ねが、通常の私たちの意識です。

 

 「いやいや期」に、ぶつかり抵抗を感じることにより、自分を感じ始めるのです。子どもはぶつかることにより相手の存在を感じると同時に、自分自身を感じ、確認します。もちろん、いやいや期にも個人差があるので、始まる時期、通り過ぎる時期、「いやいや」の度合いもいろいろですが、これは人間の成長発達の中の、いわば自然現象のようなもの。どの子ども必ず通過する成長発達の一段階です。

 

 反抗期の子どもにはどのように接したらよいでしょうか。まず今は、「いやいや」言う時期で、自分意識の覚醒のために必要でそうしていることをわかって接しましょう。「いやいや」という子どもを「よし、よし、やっているな! ちゃんと成長している証拠だ!」くらいの気持ちで受け入れて、その上で子どもの言っていることに振り回されず、子どもにお伺いはたてずに、「朗らかな壁」になってあげてください。

 

 「いや」と子どもが言ったら「じゃあ、これは?」「これにする?」と質問、お伺いを続けると、それは「いや、ダメ、ノー」と答えさせる誘導尋問になってしまいます。これを続けてしまうと、子どもは自分を感じることが出来ません。これでは「壁にぶつかって跳ね返る」のでなく、「暖簾に腕押し」状態です。「壁」になることは、怖く、感情的に怒ることではありません。大人自身がしっかりと、子どもの行うべきこと、その子にとって必要なことをしっかりと決めて、それを当たり前のこととして明快に伝えます。「質問文」ではなく、「。」で終わる文章にして、説明も省きます。なぜそれをするべきかの理由は、大人が分かっていればいいのです。

 

 一度、気持ちよくはね返られる「朗らかな壁」になってみてください。最初はうまくいかなくても、いつも同じ「朗らかな壁」であれば、子どもは「そういうもの」と、それが染み込んでいき、「壁」が動かないことを気持ちよく感じていきます。「壁」はネズミには、かじられますが、いつもそこに立っていて動かないのです。 大人がしっかりと自分意識を持っていることが、自分意識が目覚めていく子どもにとって、とてもよいお手本になるのです。

​過去のお便り

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