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園長お便り

​こちらは、園だよりで掲載されている巻頭言です。

2022年3月号

      ぼくが ここに

 

 

 久しぶりに、まど・みちおの詩集を手に取りました。「ぞうさん」を始め沢山の童謡の作詞をした方ですが、歌詞として書かれたもの以外の詩も素晴らしいものがたくさん。私の好きな詩を紹介します。

 

ぼくが ここに   まど・みちお

 

ぼくが ここに いるとき

ほかの どんなものも

ぼくに かさなって

 ここに いることは できない

 

もしも ゾウが ここに いるならば

そのゾウだけ

 

マメが いるならば

その一つぶの マメだけ

しか ここに いることは できない

 

ああ このちきゅうの うえでは

こんなに だいじに

まもられているのだ

どんなものが どんなところに

いるときにも

 

その「いること」こそが

なににも まして

すばらしいこと として

 

 

 「ぼくがぼくとしてここにいる」ということは、「ぼく」は周りと切り離された存在であるということ。その存在の場には、自分しかいることはできません。反抗期、イヤイヤ期で最初の自分意識が目覚めることは、「ぼくがここにいる」と感じる第一歩なのだと思います。

 

 私と同じ人間はどこにもいません。たくさん違いがあります。体や心や精神に関するいろいろなことも、行動の仕方、話し方、興味を持つ対象、好きなもの、嫌いなものなども、違いだらけです。今は多様性の時代と言われますが、一人一人全く別の個として独立しているのが人間で、最初から本当に多様なのです。型にはめられて同一化していったり、自発的な行為が制限されたり、人間によって作られて基準によって善悪が判断されたり、他の人と違うと非難されたり、逆に他の人と同じになろうとしたり…。そのようなことがない世の中にならないものでしょうか。

 

 卒園する年長さんたち、一人ひとりがその子ならではの素晴らしい光を持っています。この光が、これからも輝き続けるといいなと思います。滝山しおん保育園は、ここに集う子どもも、大人も、皆がそれぞれに健やかに「ここにいる」ことができる場所になりたいと思っています。

​過去のお便り

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