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創園長おたより

 滝山しおん保育で毎月発行している園だよりに掲載された記事です。

​過去の記事

025年1月号

​『子どもと大人の嘘の違い』

 

 子どもはいつから嘘をつくようになるのでしょうか。子どもの成長発達を見てみると、二歳くらいまでの子どもは嘘がつけないことがわかります。嘘をついているように見えても、意識的についている嘘ではなく、その言葉を模倣していることが多いです。

 

 一歳頃に直立して歩くことができると言葉を少しずつ話し始め、二歳くらいでだいぶ話せるようになります。でもこの時期の自分のこと、何を話し行ったかを思い出すことができません。

 二歳半くらいの反抗期・いやいや期は、最初の自分意識の目覚め。「イヤ」「ダメ」「しない!」とぶつかって抵抗を感じることで自分を確認していきます。この時期から「私」「僕」という言葉で自分のことを呼び始め、思い出せる記憶が始まります。

 

 そしてこの時期から嘘をつけるようになります。嘘をつくのは悪いことと思ってしまいますが、子どもの成長発達の中で嘘がつけるようになるということは、自分意識が育ってきている証拠。嘘をつくためには自分意識、嘘をつく主体としての「私」が必要なのです。おそらく動物は嘘をつけないのでないかと思います。自我を持っている人間だから嘘をつくことができるのです。

 どの人も胸に手を当ててみると、過去についてしまった嘘の幾つかを忘れられずにいると思います。嘘は意識的に故意に発する言葉なので、嘘をついた本人は、自分が嘘をついたことを自覚しているし、思い出せます。二歳半くらいまでは、まだ嘘をつく主体としての自分意識が発達の途中なので、言葉や行為には裏表はないのです。

 

 しかし、よく嘘をつく人もいます。よく嘘をつく人は、嘘をついているという自覚を持っていません。はっきりとした自分意識がないと、嘘をついても、嘘をついたという自覚がないのです。それは嘘をつく主体としての自分を持っていないということ。嘘は全てが悪いわけではなく「嘘も方便」と言われますが、その場合は意識的に良いことのために、あるいは他の人のために嘘をつくわけで、自分の利益のために、自分を正当化するために、事実を曲げるような嘘をつくのとは全く違います。自分の低次な欲望や欲求のために嘘をつく人は、しっかりとした自分意識、自分のことを客観的に観る視点を持っていません。本人は意識していないけれど、周りからは、嘘つき、ズルい人と見られてしまいます。

 

 九歳以前の子どもは、まだはっきりとした自分意識を持っていないので、無意識に嘘をついてしまうことがありますし、幼児ならではの豊かな想像力ゆえに現実や事実と異なることを言うこともあります。子どもの嘘には子どもの自分意識の発達度合いにあった対応が必要で、頭から悪いことと決めつける必要はありません。

 

 大人は、自分に対しても嘘をつくことができます。本当は「ノー」と感じているのに「イエス」だと自分の中で偽って行為してしまいます。それを「忖度」とも呼びますが、子どもの傍にいる私たち大人は、子どもにとってのお手本ですから、しっかりとした自分を持ち、「嘘つき」と呼ばれないようにいたしいものです。

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